フォークロアの鍵
乱歩賞作家川瀬七緒さんの深層心理ミステリー小説「フォークロアの鍵」の文庫本装画を描きました。
川瀬さんのこの作品は講談社の小説現代でも挿絵を担当していました。
細かいことはネタバレになってしまうので書けませんが、本当におもしろい作品です。というのも、作家の川瀬七緒さんが、
服飾のデザイナー
昆虫学者
民俗学に詳しい
いろいろな分野をクロスオーバーされてる作家さんで、本作品は民俗学を中心としながら主人公が謎の老人ルリ子の言動を追っていく末にある事件がおこるという物語です。
それで私は小説現代のときからこの作品を読み込んでいたので物語の中心となるルリ子おばあちゃんや、主人公の大学生女の子とその相棒の男の子が冒険に出る様子を描くのかな、と思っていたら、、編集さんのおっしゃった言葉は、
戦後復興の街をスケッチタイプで描いてほしい
という思いもよらぬご依頼でした。
主人公の千夏は3Dキャプチャーという特殊能力=話を聞いただけで立体的にその様子を頭に瞬時に描くことができ、しかも実際にスケッチできる。
を持っていて、そのようなスケッチを表紙にも使いたいということでした。
本の売出し文句にミステリーがついていたので、なにか事件が起こる様子や、暗い感じは描かなくていいのですか、と何度も聞いてしまいました。
けれど、
明るい戦後の活気ある街
が表紙になって本当によかったと思います。
はじめのラフスケッチに描いた猫を編集さん、デザイナーさんが気に入ってくださって、
こちらに視点を向けているのはこの猫だけにしましょう
ということになり、この猫を中心に絵を描いていくことに決めました。
右上の少年が、この街全体を回想している現代の老人になります。
子供たちにお菓子を配るアメリカ兵、を相手に商売をする娼婦、その他街の風景も川瀬さんの作品を読み込んで、できるだけ忠実に再現しました。
ラフスケッチはこちらになります。
この街は具体的に、横浜にある伊勢佐木町という街ですが、空の部分にタイトルが来るので看板などは排除し、大きく空を見せることにしました。人物などもあまりごちゃごちゃするとかえって重要なアメリカ兵や娼婦に目がいかなくなるので必要最低限に配置しました。
より詳細な制作過程をYoutubeにまとめましたのでみてください。
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最後に
本の表紙というのは読者の購買に大きく作用するので毎回とても緊張します。私も本のジャケ買い、よくするのですがこういう風な明るい本だと手に取りやすいかもしれません。明るいのに、戦後の闇の部分(娼婦)も描かれていたりすると、無意識に読者の脳裏にミステリーへの布石が敷かれるのかな、と思ったりします。
私が挿絵を担当していたときは、この小説のタイトルは「おろんくち」、でした。フォークロアの鍵の中でルリ子がつぶやく「おろんくち」には深い意味がありますので是非読んでみてくださいね。
Kanako Okamoto
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