シングルマザーがAirbnbをはじめてわかったこと
シングルマザーがAirbnbをはじめてわかったこと
目次
こんにちは、民泊歴6年でイラストレーターの岡本かな子です。
Airbnbについては以前クーリエでも連載していたのですが、今回のコロナ騒動で全予約がキャンセルとなり時間ができた今、自分のブログでもまとめておこうと思います。
民泊を始めた理由
私が民泊をはじめたのは、2014年の春先で、娘は6歳でした。そのころAirbnb貸し出し物件なんて都内に数件あっただけで全然知られていなくて、しかも圧倒的に同居型とか二世帯住宅の一室を貸し出すスタイルで、本業のビジネスでやっている人、すなわち丸貸し物件はほんの数件しかありませんでした。私は当時両親から譲り受けたお家に家族で住んでいたのですが離婚してしまい、元旦那さんの空き部屋を民泊として貸し出すことに決めました。
理由は、
- お金が稼げる
- 母子二人で住む孤独を和らげる
の二点です。この2つの理由ってほどよくマッチしているんですよね。誰かが泊まりにきてくれて楽しいのはいいけどタダだと負担が大きすぎる、かといって完全にビジネスとしてやりきるには虚しすぎるし、精神的に落ちていたのでそこまでがんばれない、なので当時の私には「民泊」という手段が私にぴったりあった生きる術でもありました。
シングルマザーはまじで過酷
シングルマザーってなってみないとわかんないと思いますが相当ハードです。
自分は精神的にも経済的にもぎりぎりで孤独の崖っぷちに立っているのに、子供に笑顔や愛を与えないといけないタフな存在なんです。
なかなかしんどいですよね。
そんな状態が24時間365日続くので、毎日必死、必ずどこかで息抜きが必要です。
ちなみに当時の私に「民泊」というチョイスがなければ、母子でシェアハウスに引っ越していたと思います。
大切なのは、「子供と二人きりにならないこと」「色んな人のいる環境で育てること」だと思います。
これがあれば近年問題となっているシングル家庭での子供への虐待やネグレクト、母親自身の鬱や間違った再婚というのは相当回避されると思います。
シングルマザーやファーザーのみなさん、頼れるとこがあるのだったらどんどん頼ったり、もしくは自分一人で子育てする環境を回避しましょう。
昔は大家族とか、隣近所の助け合いとか、お寺での悩み相談とかいろんな補助システムがあったと思うんですけど、現代日本では隣に住んでいる人がどんな人か知らない、挨拶もしないが割と普通ですよね。まして子供を預けたり、面倒みあったりとかなにかあったらの責任問題にもなるのでこちらもあまり一般的ではないですね。
そこで解決策になるのが、シングルマザーシェアハウスとか民泊だと思います。
私の選んだ民泊は世界中からゲストがわざわざお金を払って家に泊まりに来てくれて、「同居型」を選んでいるのでコミュニケーションを求めるゲストと生活をシェアすることです。
こちらも子供といっしょにものすごくコミュニケーションを望んでいるのでお互いの希望がマッチした形となりました。
それも本当にささいなこと、子供の話す完璧でない日本語とか、日本の遊び、将棋倒しやカルタ、折り紙、娘の教える書道なんかは本当に喜ばれました。
Airbnbゲストの傾向
2014年〜2015年に来たゲストはAirbnbのいう「住むように旅をする」というポリシーのもと、経験に価値を求めるゲストばかりでした。
普通に東京でシングルマザーが暮らしている、そのなんの変哲もない日常(経験)がお金を払う価値を見出す人たちです。
日本に住んでいる人たちからすればそれは価値のないことですが、外国人が現地の日本人の生活を体験できるというのはそれなりに価値があるらしいということが私もびっくりしました。
この頃は携帯電話を見る度にすぐに予約が入ってしまい、予定がある日などはあらかじめクローズしておかないといけないのですが、かなり先まで入れたとしてもオープンするや否やすぐに次の予約が入るといった状況でした。
また、はじめ一泊6000円くらいではじめたと思うのですが、こちらも9000円くらいに徐々に値上げしていっても全然予約が来る時代でした。
日本という観光資源の素晴らしさ、それを是非みたいというインバウンドの力を感じました。
民泊をはじめて得られたものはお金だけではなかった。
当時私は、離婚したばかりで相当落ち込んでいたのですが、多文化、ステップファミリー、再婚、晩婚が普通にある海外の人たちからみれば、一度くらいの離婚など全然大丈夫、あなたはまだ若くてこんなにかわいい娘がいるんだからがんばれるでしょ!と何度励ましの言葉をもらったかわかりません。
それからステップファミリーってどうなの?とかシングルマザーのもとで育った子にはそういうのって寂しかったの?とかいろんな人生の質問をして、幅広く解答をもらいました。
特に最初のゲストはとても忘れがたい人たちでした。彼らはオランダから兄妹で旅をしていて、この旅自体がお兄ちゃんから妹への誕生日プレゼントだというのです。それだけでも素晴らしいなと思うのに、彼らは数年前に両親を交通事故でなくし、他にも両親が養子縁組した中国人の兄妹がいるというダイバーシティを絵に描いたような子たちでした。
そんな複雑な背景を抱えているのに、明るく元気に旅を楽しんでいる兄妹をみると私もがんばらないと、と勇気づけられました。
ゲストと観光
ゲストを観光に連れ出すなんてめんどくさい!と思う方もいると思います。
けれども、これがシングルマザーの私にとって一番助かった点でした。
小さな子どもを抱える両親にとって、悩みの種の一つは休日の過ごし方だと思います。
お家の中にずっといては退屈してしまう子供を近所の公園に連れ出したり、テーマパークに連れ出すのが一般的だと思うのですが、シングルマザーがそういうところに行くと「休日の幸せな家族の図」をみて逆に落ち込んでしまうんですね。(そんなひねくれた考えをしてしまうのは当時の心理状況のせいだったのかもしれません。)
それよりもゲストと観光地巡りをするのが、子供も喜ぶしまさに一石二鳥でした。私自身も長らく東京に住んでいながら、東京のことをあまり知らなかったし、電車にのって郊外の場所へ行くのも楽しかったです。
明治神宮、浅草、新宿御苑、箱根、江ノ島、鎌倉、など本当にいろいろなところへ行きました。
まだまだ気持ちが落ち込み傾向にあったので、私一人でこんなにたくさんの場所に娘を連れて行くことは不可能でした。
まだ小さかった娘がぐずったり、私一人では大変だったこともゲストが率先して手伝ってくれたので助かりました。
大変なことも楽しいことも、全部ゲストと共有してたくさんの場所を娘と訪れることができたのは本当に素晴らしい思い出です。
長期滞在のゲスト
2016年になると、ゲストの傾向が変わってきました。3ヶ月の長期滞在の予約が入るようになったのです。はじめは、学生が多かったのですが、徐々に社会人でリモートワークが可能な人たちに変わりました。そしてその人たちは毎年リピートで滞在しに来るのです。
30代〜40代で、午前中はシェアオフィスで仕事をし、午後は日本語学校に行きます。そしてたまにですが時差の関係で夜中にインターネット会議に参加しているようでした。
年に3ヶ月家に滞在し、来年も来るよという人たちなので、もはや親戚です。というか、血の繋がった人よりも更に濃い繋がりを感じています。
彼らは私の娘の成長を本当に楽しみにしてくれて、そういうのもシングルの私には心強く思いました。
民泊新法
そんな中で、一昨年、民泊新法が制定されました。
今までグレーゾーンだった民泊を合法的にするために、保健所や役所、消防署などをまわり、点検を受け、許可証をもらってお家の外に貼りました。180日の宿泊日数規定があるのですが、29日以上の宿泊は民泊新法の規定にはまらず、家主との個人的な契約になるそうです。3ヶ月の長期滞在が多い私にとってこの新法は痛手でもなんでもありませんでした。
これまでと同じように、Airbnbを続くけていくことができました。
2018年に更に民泊をやりやすいものにしようと、それまでの民泊で稼いだお金でリフォームを行いました。
具体的にいうと、ゲストの部屋にシャワールームと洗面をつけ、造作のL字型の二段ベットと大きな机を配置しました。
これによってゲストは好きな時間にシャワーを浴びれるし、大きな机で勉強や仕事に励むことができるようになったと大変喜ばれました。
水回りを完全に分けたことで、コミュニケーションが取りたいときだけ共用のリビングに来ればいいスタイルになったので民泊がよりしやすくなりました。
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新たな民泊、新たな使い方
2015年のあたりで民泊が絶対に儲かることはわかっていたので、近所の古民家を借りてリフォームし、2つ目の民泊にしました。同時期に実家にある使われていないマンションの一室も、退職して時間のある父と共同で運営していました。
マンションを民泊用にデザインして、現地のカメラマンに撮影してもらったのですが、お掃除をその方の奥さんがしてくださることになり、その方と父とリモートで案内をしていました。
自宅では2部屋貸し出していたので、最大で4つの民泊を当時は運営していて大変忙しかったです。できるものは全て自動化していたつもりでしたが、思ったよりも時間も体力も使い、その時期に新たなパートナーと出会って二回目の妊娠もしたので体調のこともあって手がまわらなくなり、新法制定時期に自宅以外の民泊は辞めてしまいました。
近所の古民家は民泊用にリフォームしたり、きれいに使っていたので、管理業者さんが民泊で使うことをokしてくれただけでなく、冬場の家賃はいらないから継続して借りてほしいと頼まれたことはびっくりしました。
またこのときに、個性的なお家は民泊以外での使用法もあるということを発見しました。
予約の間にスペース利用で貸し出しても大人気だったのです。
都内で古民家というのが大変貴重らしく、撮影会やコスプレの会場としての利用で大人気でした。写真撮影は、プロの方だけでなくアマチュアの方も利用するというのがびっくりしました。休日に、高いスペース代金を払ってモデルさんを雇い、一流の機材で撮影するのです。そいう需要があるというのが驚きでした。
また映画関係やテレビ、ウェブコマーシャルの撮影の問い合わせも多くあったのですがこちらはちょっと注意が必要でした。なぜならこれらの方はとにかく人数が多く、出入りの回数もはげしく、近所迷惑になる可能性があるからです。このケースの撮影は予め人数を確認したりするのに注意し、超えるようなら断っていました。中には有名な映画監督の名前もあったりしました。
この時から個性的な物件は築年数や場所によらず安定的な顧客がつくというのを知りました。
滋賀で運営していた物件は駅から相当遠いのにもかかわらず予約が絶えなかったのは、「琵琶湖が一望できる景色」があるからでした。
このように他にない魅力のある物件は宿泊でも貸しスペースでも人気です。
今後のこと
現在は自宅の一部屋のみの貸し出しですが、このコロナ騒動が収まればかならずインバウンドが戻ってくると思うので時期をみてまた民泊なのかホテルなのか、経営の機会を得たいと思っています。
個人的にニッチな物件が大好きなのでそのような場所に巡り会えればなといつも目を光らせています。
同居でも丸貸しでも、私は民泊に対して特別な思いがあります。
現在中学生の娘を、経済的にも心の余裕的にも育てる助けになったのは民泊を通じてのことでした。
悪いイメージのある民泊ですが、子育て家庭、シングル家庭、リタイア後の新しいビジネス、なにかの都合があって(寝たきり老人がいるなど)お家からでれない人にとって、とても相性のよいものだと思います。
私も前の旦那さんがうつ病でお家で看病していたのですが、お家の中に深刻な問題を抱えている、外にでれない状況が続くとこちら側まで気もちがふさぎ込んでしまうのです。
そんな時、活気あふれる元気なゲストが外から新鮮な空気を持ってきてくれたら少しが元気になれると思うのです。
離婚をして一人で子育てをして、気持ちがあまり上がらないときでも、その日の夜にゲストが東京を観光してみてきたこと経験してきたことを聞くとこちらもわくわくして元気になれました。こちらも未来を開拓していかなくては、と勇気をもらえるんですね。
しばらく新たなゲストに出会う機会はないのですが、2014-2020まで私が経験したことを記録しておきたいと思い筆をとりました。長い文章を読んでいただきありがとうございました。
関連情報
Kanako Okamoto
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